金持ちくらぶとは

金持ちくらぶとは、なんと素晴らしいのでしょう。

このクラブでは、会員はお金を出しあって、一年に一度だけ、クラブの会合を開くことができるのです。
そして、会合には、それぞれの会員が、自分の持ち分として、お金を出さなければなりません。
会合が開かれるまでのあいだに、そのお金をきちんと用意しておかなければならないわけですから、けっこうたいへんな作業なのです。
もちろん、会合が開かれてしまえば、もうだれもお金を出す必要はなく、また会合を開いた会員たちは、どんなことがあっても、必ずそれを守らねばなりません。
もし約束を破ったら、その人は除名されてしまうのです。
そして、いったん除名されてしまったら、二度とクラブに戻ることはできないというきまりになっています。

このクラブは、いわば一種の銀行のようなもので、会員たちがお互いに出しあったお金をプールし、必要なときに引き出して使うことができるようになっているのです。
つまり、会員たちは、このクラブで毎年一回だけ会合を開き、そこで自分たちが出した金額に応じただけのお金を引き出すことができるわけですね。
ただし、それはあくまでもクラブが定めた範囲においてのことであって、それ以外の用途に使おうとすれば、たちまち見つかってしまいます。
そして、その場合には、罰金を払うことになるのです。

ところで、わたしたちの町にも、こんなクラブがありましたっけね。
たしか、〈友愛クラブ〉とかいう名前だったと思いますけど……。
いったいあのクラブは、どうなっているんでしょうかね?
ひょっとしたら、今もまだちゃんとあるのかしら?
あるいは、なくなってしまったのかしら?
まあ、そんなことはどうでもよろしい!
ともかく、クラブというものは、いつの時代になっても、やはり楽しいものですよね。

そういえば、わたしたちもよく遊んだものですよねえ。
たとえば、鬼ごっこなんて、みんなよくやりませんでしたか?
わたしたちも、よくやったもんでしたよ。
これは、ひとりの鬼を決めて、他の仲間はその鬼から逃げ回るっていう遊びなんですけどね。
これって、なかなかおもしろかったんですよ。

それに、この遊びには、ちょっと変わったルールがあったりして……(笑)。
えーと、まず、鬼を決める方法なんですけど、これがけっこうむずかしくて……。
だって、ふつうは、じゃんけんとかくじ引きなんかで決めることが多いじゃないですか。
ところが、この町では、どういうわけだか、いつもいちばん強いやつが鬼になるんです。
つまり、じゃんけんをしても、くじを引いても、勝ったほうが強いということになります。
それでいて、ほかの人たちは、自分が負けるかもしれないと思ってしまうため、どうしても遠慮がちになってしまい、本気で逃げることができないのです。
だから、弱い者いじめになってしまうということにもなりかねないんですよね。

でも、そこがこのゲームのコツでもあるわけです。
つまり、このゲームの本質というのは、実は、弱い者をいたぶることにあるのではなくて、むしろ強い者に勝つことでもあるのです。
弱い者が強者に勝ってしまうことによってこそ、ゲームとしての面白みが出てくるというわけです。
しかも、それが一番うまくいくのが、ちょうど鬼決めのときだというわけですね。

さっき申しあげたように、このゲームは、もともと弱い者いじめをすることが目的ではありませんから、わざと鬼に負けてあげるというのも一つの方法ではあるのですが、わたしたちはそういうふうにして遊んだことはありませんでした。
なぜかといえば、それだとゲームとしてつまらないからです。

弱い者のくせに、わざわざ負けたりするのは卑怯だぞ──と、だれかに言われてしまいそうな気がするでしょう?
ですから、いつも鬼を決めているときは、絶対にじゃんけんに勝ってやるぞ、とみんな心に誓っていたものです。
それに、わたしたちはしょせん子供ですから、強い者とか弱い者とかに関係なく、ただ単純に勝ちたいと思うだけでした。
だから、けっきょくわたしたちは、いつも本気になって戦いましたよ。

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